
アパレル販売で「いらっしゃいませ。ご自由にご覧ください」と、声をかけたのに、何も買わずにお客様が帰ってしまう…。そんな経験はありませんか?
新人販売員の多くが陥るこの悩み。その原因は「自由にどうぞ」という“親切なつもりの接客”に潜んでいます。
実は、売れるアパレル販売員は、お客様に“自由”を与えすぎない工夫をしているのです。
この記事では、新人販売員でもすぐに実践できる、販売力アップのための「たった一つのコツ」をご紹介します。
難しいテクニックは必要ありません。お客様に寄り添いながら、自然に提案していくための考え方と、すぐに使える具体的な会話のポイントをお伝えします。
「アパレル販売、自分には向いていないかも…」と思っている方こそ、ぜひ最後まで読んでみてください。
アパレル販売で売れるコツは「商品の絞り込み」

「どうぞご自由に店内ご覧ください」
洋服を販売するとき、このような言葉でお客様に自由に商品を選んでもらってませんか?
一見、お客様のことを第一に考えた優しい接客のように感じるかもしれませんが、これでは商品購入の確率は下がってしまします、
なぜなら「人間は自由だと動けなくなる」からです。
例えば、会社の会議やミーティングで「何か新しいアイディアはないのか?自由な意見を出してくれ」と、言われたら困りませんか?
これはお客様も同じ。「店内の商品から自由に選んでいいよ」と言われても、たくさんの商品の中から選ぶのは難しいと感じてしまうのです。
つまり、相手に自由を与えることは、相手を困らせること。
実家で家族と暮らしている時、こんなやりとりはありませんでしたか。
・お母さん「今日の晩ごはん、何がいい?」
・あなた「え〜、なんでもいい」
・お母さん「なんでもいいが、一番困るんだよ」
自由を与えられたお母さんは必ずと言っていいほど、晩ごはんのメニューに困ってしまいます。
この時の理想の答えは、小さなことでもいいから選択の範囲を狭める言葉を返すことです。
・お母さん「今日の晩ごはん、何がいい?」
・あなた「今日は、和食がいいかな」
・お母さん「和食か〜、すごくお腹減ってる?」
・あなた「メッチャお腹減ってる!」
・お母さん「そしたら、ちょうど冷蔵庫に材料ありそうだから親子丼にしよう!」
「なんでもいい」という言葉を、「和食」という言葉に変えたことで会話が進み、お母さんの行動に繋がりました。
このことから言えるのは、「人間は範囲を指定された時に動ける」ということ。
このことを洋服の販売に当てはめると、「選択肢を減らすとお客様は購入し、選択肢を増やすとお客様は購入しなくなる」ということになるのです。
商品説明は「絞った理由」を伝えよう!

ここまでの内容をもとに、まずは、売れない販売員の接客の流れを見ていきましょう。
※お客様入店
・販売員「いらっしゃいませ。どうぞご自由に手に取ってご覧ください」
お客様がTシャツを手に取る
・販売員「こちらは、USAコットンを100%使用した、耐久性の高いTシャツです。」
次は、お客様がパンツを手に取る
・販売員「こちらは、今年らしいワイドシルエットのスラックスになっていて、リネン素材が上品な艶感を出してくれています」
このように、なかなか購入に繋げられない販売員は、お客様に自由を与え、お客様が気にされたアイテムの「商品情報」を伝える。このことを永遠と繰り返してしまいます。
しかしこれは、お客様に自由を与えているという前提は何も変わっていないので、購入確率は上がりません。
一方、売れる販売員は、まず、お客様との会話の中から「目的、好み、ライフスタイル」といった、お客様個人の情報を聞き出します。
- 「どちらかに、お出掛される用のお洋服ですか?」
- 「AとBだとどちらのシルエットがお好みですか?」
- 「お仕事はスーツを着られますか?」
こうした質問を会話の中で自然に繰り返しながら、提案する商品を3点(多くても6点。※「選択肢が多すぎると人は選べなくなる」と言う心理学のジャム理論に基づく)に絞り込みます。
そして、「絞った理由」をお客様に説明していくのです。
「社員旅行に着ていかれるとのことてしたので、キチンとしながらも、リラックスして着れる、こちらのジャージー素材のジャケットはいかがでしょうか」、「お仕事では作業着でいることがメインだとのことなので、一緒に参加される社員さんに、いつもと違う一面を見せれますよ」
こうして、お客様に制限を与え、お客様お一人お一人に合った理由を説明していく。
このことが、販売の購入決定率を上げていくのです。
まとめ

あなたはこれまで、「人に自由を与えることを良しとし、ルールなどで制限を与えることは良くないことだ」と、思ってきませんでしたか。
時として、相手に自由を与えることは必要かもしれません。しかし、相手に行動を促すという場面においては、「人間は自由だと動けなくなる」という行動心理があることを忘れてはいけません。
選択肢を絞り込んで、相手に制限を与えるのは簡単ではありません。
それは、“相手のためになることを考えた制限”を与える必要があるからです。
本文中で例に挙げた、お母さんからの「晩ごはん、何がいい?」の質問に対し、「なんでもいい」と答えた会話を思い返してください。
きっと、お母さんのことを考えて「なんでもいい」と言っているのではなく、考えるのが面倒だから「なんでもいい」と言っているのではないでしょうか。
つまり、「なんでもいい」は、思考停止しているのと同じこと。決して相手にとっての優しさではありません。
今日から、「なんでもいい」と言うのをやめてみませんか?
ちょっとした日常の積み重ねが、販売のお仕事にやりがいをもたらしてくれるはずです。
この記事が、「自分は洋服の販売に向いてないかな…」と、思っている方のヒントになってくれれば嬉しく思います。