
90年代、雑誌「Boon」を片手にレッドウィングを探し回っていた。そんな記憶を持つ方も多いのではないでしょうか。リーバイス501に白T、足元にはアイリッシュセッター。あの頃を象徴する“王道スタイル”は、今思い返しても胸が熱くなるものがあります。
時代は変わり、ファッションのトレンドも大きく動きましたが、レッドウィングだけは不思議なくらい古びません。それどころか、40代・50代になった今こそ、当時よりもずっと似合う靴になったと感じます。
無駄のないデザイン、履くほど味が深まるレザー、そして“育てる楽しさ”。若い頃は気づけなかった魅力が、大人になった今ならしっかり味わえるのです。
この記事では、レッドウィングの歴史と90年代ブームを振り返りながら、なぜ今また大人の男性に選ばれているのかを掘り下げていきます。
さらに、40代・50代の男性が今選ぶべき レッドウィングのおすすめモデル6選 も紹介。この記事を読めば、90年代当時の憧れをもう一度取り戻しながら、今のあなたのスタイルにしっかり馴染む「一生付き合える相棒」が必ず見つかります。
大人になった今こそ、レッドウィングの価値を満喫してみてはいかがでしょうか。
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なぜ僕らはあの頃レッドウィングに憧れたのか?90年代ブームを深掘り

僕たちがまだ10代、20代だった頃、あのレッドウィングブームはいったい何だったのでしょうか。
渋カジや雑誌の影響、そしてカリスマたちの存在。ここでは、時代を振り返りながら、僕らがレッドウィングにこれほどまでに魅せられた理由をあらためて紐解いていきます。
「渋カジブーム」紺ブレ、501、そして足元はアイリッシュセッター
1980年代後半から90年代初頭にかけて、日本の若者文化を大きく動かした“渋カジ(渋谷カジュアルの略)”ブーム。その原点ともいえる「キレカジ(きれいめカジュアルの略)」スタイルでは、紺のブレザーに色落ちしたリーバイス501の合わせが正解とされていました。
そして、その渋カジと見事に融合したのがレッドウィング。1982年に日本国内で正式に取り扱いが始まると、アイリッシュセッターやエンジニアブーツは、当時の男子が憧れるアイテムとなります。

やがて流行は、より無骨な「ハードアメカジ」へと進化。紺ブレなどのきれいめアイテムの流行は収束をむかえますが、レッドウィングだけはまったく揺るぎませんでした。むしろ履き込むことで味が出た一足は、当時の若者たちにとってアイデンティティを示す象徴になったのです。
「Boon」を代表とするファッション誌という情報源
スマホで簡単に情報を得ることができる現在とは違い、当時は雑誌だけが頼り。より旬な情報をゲットするために、発売日にあわせて本屋に行くのが習慣でした。
当時のファッション誌には「COOL TRANS」、「smart」、「ASAYAN」、「ストリートジャック」、「POPEYE」、「MEN’S NON-NO」などがありました。
そのなかでも、古着・ヴィンテージ好きの男子にとって「Boon」の存在は特別。“ストリートファッションの教科書”とも言える誌面内容で、当時の古着ブームやスニーカーブーム、そしてレッドウィングブームを牽引しました。
当然Boonを読んだ僕たちは、レッドウィングへの憧れが強まります。ショップで、「完売」「次の入荷は未定」と言われても購入を諦めきれません。今のように、オンライン販売などない時代なので、まるで宝物を探しあてるかのように何軒もお店をハシゴしながら、お目当ての一足を手にしようとしました。
雑誌が示してくれる「これがかっこいい!」の基準は明確で、その中心にレッドウィングがいたのです。
藤原ヒロシの「黒」と木村拓哉の「赤茶」
レッドウィングをワークブーツから「ファッションアイテム」へと完全に昇華させたのは、2人のカリスマです。
90年代、レッドウィングブームの火付け役となったのは、ストリートの教祖的存在だった藤原ヒロシさん。1996年、彼が雑誌の連載で紹介した私物の「黒いアイリッシュセッター(8176など)」が大きな反響を呼びます。それまでワーク色の強かったブランドイメージを一気にクールなストリートアイコンへと変貌させ、カスタムソール(ビブラムソールへの交換など)の文化も広めました。
そして、その人気を社会現象へと押し上げたのが木村拓哉さんです。ドラマ「ロングバケーション」や「若者のすべて」で彼が着用した赤茶色のモックトゥ(8875)とエンジニアブーツは、日本中の店頭から姿を消しました。彼の影響力は絶大で、その当時憧れた「Tシャツ、デニム、レッドウィング」という究極にシンプルなスタイルを、40代・50代となった今でも貫いている男性も少なくありません。
高まる希少性と高騰する価格
90年代半ばのブーム最盛期、レッドウィングの入手難易度は異常なレベルに達します。
特に人気の「赤茶(オロラセット)」カラーのモデルは、定価の2倍、3倍というプレミア価格で取引されることも珍しくありませんでした。
需要に対して供給が全く追いつかず、入荷日には長蛇の列ができ、いわゆる「レッドウィング狩り」のような事件さえ噂されるほどの過熱ぶり。さらには模倣品までが市場に出回る事態となりました。当時、レッドウィング(特にアイリッシュセッター)に憧れを持ちながらも、購入できずに終わった40代・50代の男性も多いのではないでしょうか。
そして、この希少性の高さもまた、レッドウィングブームをさらに後押ししていったのです。
レッドウィングの歴史と3つの魅力

レッドウィングには、創業100年を超える歴史と、大人になった今だからこそ理解できる素材や製法へのこだわりがあります。
ここでは、レッドウィングの歴史と、3つの魅力を解説していきます。
レッドウィングはアメリカの現場で磨かれた“本物”のワークブーツ
レッドウィング社は、1905年にアメリカ中西部のミネソタ州で、チャールズ・ベックマンと14人の仲間によって創業されたワークブーツブランドです。
もともとは林業や鉱山など、命に関わる過酷な現場で働く人たちのために作られていました。だからこそ、無駄を削ぎ落としたデザイン、壊れにくい縫製、履くほどに馴染んでいくレザー。すべてが“機能の積み重ね”でできています。

特筆すべきは、世界でも稀な「自社タンナー(皮なめし工場)」である「S.B.フット社」を所有している点です。原皮の調達からなめし、製造に至るまでを自社で一貫管理できるため、他ブランドには真似できない高品質なレザーを安定して供給できます。
この製造背景こそが、レッドウィングが永遠のスタンダードであり続ける理由です。たとえば代表作である「アイリッシュセッター(875)」が登場したのは1950年代。驚くべきことに、その基本的なデザインは半世紀以上経った今もほとんど変わっていないのです。
それは、レッドウィングが「変える必要がない」ほどに完成された機能美を持ち続けているからに他なりません。
伝統の「ピューリタンミシン」と「グッドイヤーウェルト製法」
レッドウィングのブーツをよく見ると、負荷のかかる部分が三重のステッチ(トリプルステッチ)で縫われていることに気づきます。これは創業当時から使われている「ピューリタンミシン」によるもので、ラテックスを染み込ませた糸で縫うことで防水性と強度を高めています。

「グッドイヤーウェルト製法」も重要なポイントです。この製法は単に頑丈なだけではありません。ソールが磨り減った際に交換することを前提に設計されており、10年、20年と履き続けられる「一生モノ」としての価値を保証しています。
履き込むほどに自分だけの相棒になる「経年変化(エイジング)」
レッドウィングは箱から出して履き始めた瞬間から、自分だけの一足にしていく「育成」が始まります。
最初は硬く感じる肉厚なレザーは、履くたびに持ち主の足の形に合わせて伸び、明るかった革の色に渋みが出てくる。丁寧にオイルを入れて深い艶を楽しむのもよし、あえてラフに履いてワイルドな傷を楽しむのもよし。こうして、他の誰にも作り出せない、唯一無二の一足へと進化していきます。



自分だけの一足に育っていくブーツを、ただただ眺める時間が至福だというレッドウィングファンも少なくありません。
「レッドウィングは新品が最高の状態ではなく、味を出すことで最高の状態に仕上がっていく」。そんな、お金では買うことができない“エイジングの価値観”は、他のどの世代よりも、今の40代・50代世代が強くもっているはずです。
【2025年最新】40代・50代男性に履いて欲しいおすすめモデル6選

数あるレッドウィングのラインナップの中から、大人の男性に似合う6足を厳選しました。
王道のクラシックモデルから、2025年最新の一足まで、それぞれの特徴と魅力を紹介します。
新875 Classic Moc Toe(クラシックモック)オロレガシー
レッドウィングと聞いて誰もが思い浮かべるのが、このつま先がU字型に縫われたモックトゥブーツ。中でも「875」は、ブランドを象徴する最もスタンダードなモデルです。
使用されている「オロレガシー・レザー」は、革本来の自然な風合いを活かしたなめし方が特徴。実はこの革、表面に塗装や加工(お化粧)をしていないため、原皮の段階で傷の少ない「一番上質な革」を使わざるを得ないという贅沢な仕様なのです。
履き始めは明るいオレンジがかった茶色ですが、オイルを入れて履き込むことで、徐々に深みのある飴色へと変化していくのが最大の魅力です。
6-INCH CLASSIC ROUND No.8165(ブラッククローム)
モックトゥと並ぶ定番モデルが、丸いつま先のラウンドトゥ「8165」です。シンプルなデザインと黒いレザーの組み合わせは、どんなスタイルにも合わせやすく、オンオフ問わず活躍する万能性が持ち味。
このモデルに使われている「ブラッククローム・レザー」は、厚い塗膜を持っており、水や汚れに非常に強いのが特徴です。傷もつきにくく、汚れてもさっと拭くだけできれいになるため、メンテナンスが楽な点は大きなメリットとなるでしょう。きれいめスタイルのハズしとしても使える、汎用性の高さが魅力です。
アイアンレンジャー 8111(アンバーハーネス)
近年、世界的に爆発的な人気を誇っているのがこの「アイアンレンジャー」です。元々は鉱山で働く労働者の足をつま先の落石から守るために開発されたモデルで、つま先の革を二重にした「キャップドトゥ」のデザインが圧倒的な無骨さを放っています。
使用されている「アンバーハーネス・レザー」はオイルを豊富に含んでおり、多少のキズが付いても指で強く擦れば馴染んで消えてしまうほどの復元力を持ちます。40代・50代の渋みが出てきた男性にこそ似合う、ヴィンテージ感あふれる男臭い一足です。
3194 Classic Chelsea(クラシックチェルシー)
レッドウィングを使って、最新トレンドの着こなしを楽しみたい。そんな方におすすめなのが「クラシックチェルシー」です。
最新のクラシカルトレンドにマッチしているだけでなく、サイドゴア(ゴム)仕様で脱ぎ履きが楽にできるのも魅力の一つ。特に靴を脱ぐ機会の多い日本の生活様式において、この快適さは一度味わうと手放せません。
伝統的な製法はそのままに、中底にはクッション性の高い素材(ポロン)を採用するなど、現代的な履き心地へのアップデートも施されています。すっきりとしたフォルムは、大人のきれいめスタイルを上品に格上げしてくれます。
RW-8168 9インチ ペコス(ラフアウト)2025年モデル
「ペコス」とはレッドウィング社だけの商標で、牧場や農場で働くために作られた、紐のないプルオンタイプのブーツです。90年代のアメカジブームを知る世代にとっては、非常に懐かしく、愛着のあるモデルではないでしょうか。
特にこの「ラフアウト(スエード)」モデルは、毛足の長い革を使用しており、傷や汚れを気にせずガンガン履けるタフさが魅力です。太めのデニムと合わせるのが当時の鉄板スタイルでしたが、その相性の良さは今も健在です。
経年変化で毛足が寝て黒ずんでいく様もまた、たまらない味となります。
101 POSTMAN OXFORD(ポストマン)
その名の通り、かつてアメリカの郵便局員(ポストマン)が制服として着用するために開発された短靴です。毎日重いバッグを背負って歩き回る彼らのために採用された、平らでクッション性の高いソールが特徴です。
光沢のあるガラスレザーを使用したシンプルなデザインは、カジュアルはもちろん、ビジネスシーンでも違和感なく使えます。雨にも比較的強く、スニーカー感覚で歩けるのにしっかりと革靴の品格があるため、通勤用の一足としても非常に人気があります。
レッドウィングのサイズ選び

一般的にレッドウィングは、ナイキやアディダスなどのスニーカーサイズと比べて作りが大きいため、「普段のスニーカーから0.5cm〜1.0cm小さいサイズ」を選ぶのがセオリーと言われています。
また、レッドウィングの特徴として「ワイズ(横幅の広さ)」の表記があります。
- Dワイズ:幅広型の日本人にとってやや狭め / アメリカ基準での標準幅
- Eワイズ:幅広型の日本人向けサイズ / アメリカ基準ではやや広め
多くの日本人は足の幅が広い傾向にあるため、安易に長さを下げてしまうと、つま先には余裕があるのに小指の付け根が締め付けられて痛い、という事態に陥ることがあります。
自分の足幅が広い自覚がある場合は、長さを下げすぎず、スニーカーと同じサイズか、せいぜい0.5cm下げる程度に留めておくのが安全です。
ちなみにこのブログの筆者である僕が履くレッドウィングは、「US7.5(約25.5cm)Eワイズ」。基本サイズは、adidasスタンスミスで26.5cm、一般的な革靴で26cmです。
つまり、スニーカーサイズからは1cmダウン、革靴サイズからは0.5cmダウンさせたサイズ選びとなります。ぜひ参考にしてみてください。
40代・50代のレッドウィング:まとめ

レッドウィングは、10代・20代の頃に憧れた“青春の象徴”でありながら、40代・50代になった今こそ、その本当の価値を味わえるブーツです。自社タンナーの革、伝統製法、履き込む楽しさ。どれも大人になった今だからこそ実感できる魅力です。
この記事では、おすすめの6足も紹介してきました。もちろん、この記事を参考にレッドウィングを新たに購入するのもいいでしょう。
しかし、青春時代に購入した一足があるのなら、シューズボックスの奥から引っ張り出しホコリを払ってみてください。そして、レザーオイルで磨き、足を入れてみてください。きっと、途切れてしまっていた“ブーツ育て”を再開したくなるはずです。
40代・50代になった今だからこそ、大人のレッドウィングスタイルを楽しんでみてはいかがでしょうか。


